もらう側は、0.5秒で在庫照会をしている
文具好きがプレゼントの包みを開けたときの表情は、たいてい本物の笑顔です。ただしその笑顔の裏では、恐ろしい速度で棚卸しが行われています。
- 持っている(同じ型番)
- 持っている(色違い)
- 持っていないが、迷って買わなかったやつ
- 存在は知っていたが、ずっと後回しにしていたやつ
- まったく知らない。なんだこれは。最高
ちなみに文具好きが本当に喜ぶのは、下から2つです。自分では選ばなかったものが、一番おいしい。自分の趣味だけで買っていると、筆箱の中身はどんどん同じ方向に寄っていくからです。
そして仮に上の2つだったとしても、文具好きは困りません。ペンは2本あっても困らない。家用と職場用ができるだけです。むしろ助かる。
問題は、贈る側にまわったとき
地獄はこちらです。
「文具好きな人へのプレゼント、文具でいいよね」と思って店に入り、45分後にまだ何も決まっていない。あなたなら経験があるはずです。
理由ははっきりしています。相手の沼の深さがわからないから。
浅めの人に高級万年筆を贈ると、たぶん引き出しにしまわれます。深い人に定番の人気ペンを贈ると、まず間違いなく持っています。そして深い人は、こちらが想像もしていない基準(軸の太さ、重心、インクの乾き)で物を選んでいる。素人が踏み込める領域ではありません。
そして最悪なのは、贈る側も文具好きだったときです。自分の趣味を出すべきか、相手に寄せるべきかで、店内をあと3周することになります。
正解に近いのは「なくなるもの」
そこで実用的な話をひとつ。迷ったら消耗品です。
- インク(ボトルインクは香水みたいなもので、何本あっても揉めない)
- ちょっといい紙のメモ帳やレターセット
- マスキングテープ(増えても本人が困るだけ)
- 付箋の、自分では買わない絶妙なサイズ
消耗品の良さは、使い切れることです。持っていたとしても、いつか減る。置き場所も奪わない。「気に入らなかったらどうしよう」の心理的ハードルが、ペン本体よりずっと低い。
ペンを贈るなら、本体よりリフィルの方が喜ばれることすらあります。夢がないようでいて、これが真実です。
結局いちばん強いのは、ひとことの理由
そのうえで、本当に効くのはこれです。
「自分で使ってみて良かったから」
この一文がつくだけで、贈り物は急に強くなります。すでに持っていても関係ありません。同じものを良いと思っている人が世の中にもう一人いた、という事実の方が価値があるからです。
文具好きは、モノと同じくらい、その人がどう選んだかの話が好きなのです。
そして、贈る側も2個買う
最後に、ひとつだけ告白しておきましょう。
文具好きが人へのプレゼントを選びに行くと、高確率で同じものが2個レジに乗ります。
選んでいるうちに、自分がほしくなってしまうからです。あんなに真剣に検討して、あんなに良いと結論を出したものを、自分だけ持っていないのは不自然。そう脳が判断します。
贈り物は無事に渡され、相手は喜び、あなたの筆箱にも1本増える。
全員が幸せになる仕組みです。置き場所の問題を除けば。
