# 万年筆で綴られた作家人生の原点――佐藤正午『万年筆の時代』復刻版が登場

万年筆で小説を書くことを夢見た青年がいました。新人時代、パイロットの万年筆でコクヨの400字詰原稿用紙に向かい、やがてモンブランのマスターシュテュック(傑作)でブルーブラックのインクを染ませながら創作を続けた――その青年こそが、直木賞を受賞した作家・佐藤正午です。

光文社文庫から6月10日に発売される『万年筆の時代 佐藤正午復刻短編集』は、デビュー後10年間に執筆された幻の初期作品9編と番外編を厳選収録した一冊です。今では入手困難な作品ばかりで、二度の映画化を逃した「スペインの雨」、プロ初の原稿料で執筆した「青い傘」、ファンから高い支持を受ける「ルームメイト」など、若き日の創作の輝きを余すところなく堪能できます。

本書の最大の魅力は、作家人生の黎明期における確かな筆致と、万年筆という執筆道具を通じて見える創作への真摯な姿勢です。ワープロの時代を経てMacで執筆を続ける現在も、ペン立てに差された6本のモンブランが彼を見守っているといいます。

文具とともに歩んだ作家の原点を知る、貴重な一冊として注目です。